• 精液の抗うつ効果説

    「なぜペニスはそんな形をしているのか」にあった「ヒトの精液の進化の秘密」の章を紹介させていただきます。

    ※精液には性感染症などのリスクが存在するので、他者との性行為を楽しむ際はコンドームを使用することを強く推奨します。

     

     

    一緒に暮らす女性同士の月経が同期する現象は一般に知られているが、それはヒト以外の動物の雌にもみられることがあるもので「マックリントック効果」と呼ばれている。

    これはフェロモンによるものと考えられていたが、月経周期を研究していたギャロップとバーチは、次のデータからフェロモン説では説明できない事象があることを知った。

    ・コンドームを使用せず男性とセックスする女性同士が同居すると、生理周期が同期する。
    ・コンドームを使用して男性とセックスする女性同士が同居しても、生理周期は同期しない。
    ・男性との性交の機会をもたないレズビアンカップル同士が同居しても、生理周期の同期はみられない。

     

    月経周期を研究していたギャロップとバーチは、ヒトの精漿(精液から精子を除いたもの)の中の化学成分が膣からの吸収を通して生理周期が同期するホルモンを放出すると推定した。

    精液には特別な機能をもつ50種類以上の成分(ホルモン、神経伝達物質、免疫抑制物質)を含んでいる。

    精液中の、気分をよくする(不安を和らげる)主な化学物質は次のとおり
    ・コルチゾール(愛情を深める作用)
    ・エストロン(気分を高める作用)
    ・プロラクチン(自然の抗うつ薬)
    ・オキシトシン(気分を高める作用)
    ・甲状腺刺激ホルモン(気分を高める作用)
    ・メラトニン(睡眠物質)
    ・セロトニン(おそらく最もよく知られた抗うつ作用のある神経伝達物質)

     

    ギャロップとバーチのチームは、コンドームを使わずにセックスをする女性は、コンドームを使う女性より鬱状態になりにくいという仮説をたて、研究した。

    結果は次のとおり

    ・コンドームを「全く」使わずにセックスをする女性は、コンドームを「常に/普段」使う女性よりも鬱の症状が少なかった。
    ・コンドームを使わずにセックスする女性が、まったくセックスしていない女性よりも鬱の症状が少なかった。
    ・コンドームを使ってセックスする女性と、まったくセックスしていない女性とでは鬱の症状に差がみられなかった。

    この結果は、セックスをしているから幸せな状態であるというよりは、血中を流れる精液成分によってその状態にあるのではないかということが示唆されている。

     

    精液の抗うつ薬説に加え、ギャロップとバーチは、ヒトの精液中に、女性ホルモンである卵胞刺激ホルモンと黄体形成ホルモンが含まれていることに着目した。

    なぜ精液の中に女性ホルモンが含まれているのかについて、ギャロップとバーチは以下の推論を立てた。

    ・他の霊長類の雌は、尻が赤くなるなどの信号で雄にも月経周期がわかるが、ヒトの女性には男性に月経周期を認知させる外的な信号がない。
    ・生殖の鍵になるのは精液の放出が卵の排出と重なるようにタイミングを合わせることである。
    ・女性の月経周期を外的に知ることができないヒトのは男性の受精の(射精)のタイミングに合うように女性の排卵のタイミングを操作するように進化したのではないか。

     

    ギャロップとバーチの最近次の事象を研究中である。、

    ・コンドームなしでセックスしている女性は、集中を要する課題や認知課題で良い成績を示す。
    ・コンドームなしでセックスしている女性がパートナーを失うと、コンドームを使用してセックスをする女性よりも重い鬱状態に陥るが、新しいパートナーができると回復する。

     

    精液ってのは実はすごいやつだったんですね。
    これからはちょっともったいなさそうにティッシュを捨てようと思います。

     

     

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